こんにちは。しゅーしゅーです。
プレイングマネージャーとしてチームを持つようになってから、メンバーの「人柄」と「仕事の成果」のギャップに悩み、相手に苛立ったり、逆にそんな自分を責めたりする時期がありました。
今回は、その苦しい時期を抜け出すきっかけとなった、「人間性」と「人間力」を切り離す思考法について、備忘録的に書き残しておきたいと思います。
この記事で得られること
この記事では、私が実務の中で観測し、体系化した以下の内容を共有します。
- 「人間性(人柄)」と「人間力(実務推進力)」を明確に切り離す思考法
- 感情に頼らず、仕組みで実務の品質を担保するマネジメント手法
- タイプ別(人間性×人間力)の最適なアサインと接し方
問題の原因が「相手の性格」や「あなたの指導力不足」ではなく、「人間性と人間力の混同」にあることを理解すれば、部下への苛立ちや自責といった心理的摩擦をゼロにし、人柄への敬意を保ちながら、確実に実務が回るチームへと育てていくことができます。
私が、部下を感情で詰めてしまった日のこと
「アクションまで決めたのに、なんでそのまま止まってるの」
プレイングマネージャーになって間もない頃、私はある部下に対してそう口に出してしまったことがあります。
真面目で、人柄も良く、現場との関係もできているメンバーでした。でも、一緒に次のアクションまで確認し合ったはずなのに、翌週になっても何も進んでいない。
「すみません、もう少しだけ」という返答が繰り返されるうち、私の中で積み上がっていた苛立ちが、ある日爆発したのです。
その後、チームの空気は少しだけ悪くなりました。
私自身も「自分のやり方が悪かったのか」と夜中まで考え込みました。彼を「使えない」と思い始めた自分が嫌で、それもまた心をすり減らしました。
でも、後になって気づいたんです。
問題は彼の「やる気」でも、私の「指導力」でもなかった。 私が「人間性(人柄)」と「人間力(実務推進力)」という、まったく異なる2つの概念を混同して観ていたことが、そもそもの原因だったと。
「人物の印象」と「仕事の成果」のギャップという違和感
プレイングマネージャーやチームリーダーとして現場に立っていると、こうした経験はないでしょうか。
「真面目で人柄も良く、周囲からも好かれているメンバーなのに、なぜか任せた業務が前に進まない」
「態度は少し荒削りだが、任せた仕事は確実にクローズして成果を出してくる」
人は無意識のうちに、相手の「人柄の良さ」を見ると「仕事もきちんとしてくれるだろう」と期待してしまいがちです。しかし、その期待が裏切られたとき、「なぜやってくれないんだ」という苛立ちや「自分の教え方が悪いのか」という自責の念が生まれます。
このモヤモヤの正体こそが、「人間性と人間力の混同」です。ここからは、感情に頼らず仕組みで解決する構造的な思考法をお伝えします。
2つの軸を分離する視点:「人間性」と「人間力」は別物である
マネジメントにおける心理的摩擦をゼロにするための第一歩は、私たちが無意識に一括りにしている概念を「2つの独立した軸」に分解することです。
- 人間性(人柄・性格・価値観):
コミュニケーションの柔らかさ、真面目さ、道徳観、相手への思いやりなど。「人としてどうか」という定性的な軸。 - 人間力(実務推進力・完遂力):
課題を認識し、業務プロセス(理解・判断・実行・報告)を自律的に回して成果物をクローズさせる力。「ビジネスパーソンとしての実行OS」の軸。
人はどうしても「人間性が高い(いい人)=仕事もできる(人間力が高い)」と紐付けて考えてしまいがちです。しかし、これらは全く別の変数であり、「人間性は素晴らしいが、人間力(実務力)はまだ未熟」という状態は普通に起こり得ます。
この2つを明確に分離して観察できるようになると、「いい人なのに仕事ができない」という怒りや落胆は消え、「人柄としては心から敬意を払い大切にする。ただし、実務の推進は『人に期待せず、仕組みに期待する』という冷徹かつ誠実なスタンス」が取れるようになります。

実際に観測した3つの人物パターン
【人間性×人間力】の軸でチームメンバーや周囲を観察すると、大きく分けて以下のパターンに分類できます。
パターンA:人間性が高く・人間力も高い(同期の事例)
かつて私と同じ問題意識や視点を持ってチームを支えてくれた同期がいました。彼とは互いの強みを補完し合い、私がリスク管理や仕組み化を担い、彼が他部署との円滑な関係構築力を発揮することで、困難な案件も着実にクローズさせることができるパートナーでした。
このタイプに必要なのは、細かな進捗管理ではなく、適切な権限移譲と心理的負荷のケアです。特定のエースに依存しない仕組み(標準)を一緒に作るパートナーとして向き合うのが最適解となります。
パターンB:人間性が高く・人間力が未熟なメンバー(成長期待枠)
挨拶や雑談もできて、真面目で、チームの雰囲気を良くしてくれる「いい人」。
しかし、他部署など外部への働きかけが必要なタスクを任せると途中でフリーズしたり、成果物の品質にこだわりすぎるあまりリリース(完遂)に至らず、納期遅れを起こしたりします。
そして過去の私のように、「なんで進まないんだ」と感情で詰めてしまう——これが最も効果がなく、最も場の空気を壊すアプローチです。
彼らは能力やスキルが不足しているのではなく、業務を最後まで回し切る「実務推進力」の手順が見えていない状態です。このタイプには、人柄への敬意を保ちつつ、業務プロセスを分解してサポートすることが必要です。
パターンC:人間性は荒削りだが・人間力が高いメンバー(組織の劇薬)
言葉遣いがぶっきらぼうだったり、周囲とのコミュニケーションで摩擦を起こしやすかったりしますが、実務の推進力や成果を出すスピードは持っているタイプです。
彼らの過激な言動の裏には、多くの場合「妥協が許せない」「成果を上げたい」という彼らなりの強い責任感や正義感が存在します。マネージャーがやるべきは、表面的な態度の悪さだけで彼らを突っぱねるのではなく、その主張の根底にある「正当な意図」を理解することです。
実践術:感情ではなく仕組みで回す
メンバーの「人間性(人柄)」を変えることは不可能ですし、変える必要もありません。マネージャーが手をつけるべきは、彼らの「人間力(実務推進力)」を補強し、案件をクローズまで導くための「工程(仕組み)の設計」です。
どこで止まっているかを観察する
実務が進まないとき、相手を「やる気がない」と判定するのではなく、業務のどのプロセスでフリーズしているのかを物理的に観察します。実務は必ず以下の4つのステップで進行します。
- 理解: 目的やゴール、要求水準を正しく把握できているか?
- 判断: 次に何をすべきか、優先順位や解を自分で導き出せているか?
- 実行: 手を動かして具体的な作業を進められているか?
- 報告: 節目で正しく状況を共有し、アラートをあげられているか?
「いい人だけど仕事が進まない(パターンB)」の多くは、「2. 判断」のフェーズで「失敗したらどうしよう」「これで合っているだろうか」と不安になり、思考停止に陥っています。
一方で、「推進力はあるが摩擦を起こす(パターンC)」の場合、作業そのものが止まることはありません。しかし、部分最適になりすぎて「1. 理解(全体最適や関係性という大局的な目的)」がズレていたり、「3. 実行(強引な手段の選択)」や「4. 報告(周囲への配慮や言い方)」のフェーズで周囲との摩擦を起こし、結果的にチーム全体の実務を停滞させてしまう傾向があります。
相手がどのフェーズで止まっているか(あるいはエラーを起こしているか)が特定できれば、そこだけに狙いを定めたサポートが可能になります。
タイプ別の仕組みと距離感
観察結果に基づき、相手のタイプと工程に応じた「ポカヨケ(ポカミス防止の仕組み)」を組み込みます。
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パターンBへの対応: 人柄への感謝や敬意は言葉で伝えつつ、実務においては「理解・判断・実行・報告」の節目に短い中間チェックポイントを設けて伴走します。
たとえば、自発的な報告を待つのではなく、「Teamsや対面での15分チーム昼礼で進捗を可視化する」「週に2〜3回、個別メンバーごとの相談枠をあらかじめスケジュールに組み込んでおく」といった仕組みを作ります。「相談していい時間」を物理的に用意しておくことで、遠慮や迷いによるフリーズを未然に防ぎ、小さな完遂体験を確実に積み上げさせることができます。 -
パターンCへの対応: 彼らの意見の「本質的な正しさ」は正当に評価しつつ、マネージャーが間に入って「毒(攻撃性)」を抜き、チームが受け取れる形に翻訳するフィルター(翻訳機)として機能させます。
たとえば、私が実際に経験した仕入れ先との交渉でこんな場面がありました。
本人の主張:「前と比べて値上げしてきてますから、他社に相見積もり取って競合させて、値下げするよう詰めましょう」
私のフィルター後の言葉:「値段への危機感は同意。ただ、価格以外にも長年のノウハウや実績が持つリスクの低さも選定上重要だから、日程感を示した上で、仕入れ先から元メーカーへ特価調達を働きかけてもらうよう促しましょう」
コスト意識という「正義感」は正当に評価しつつ、関係性を壊さずにゴールへ向かう手段へと翻訳する。これがフィルター機能の本質です。「言動の意図は汲み取るが、手段の選び方には一緒に関わる」スタンスで接することで、彼らの高い推進力を組織の力として安全に活かすことができます。また、フィルターし続けることでマネージャー自身が疲弊しないよう、1on1で「内容は正しい、伝え方だけ一緒に磨こう」と定期的にフィードバックし、自走への移行を促すことが重要です。
おわりに:人を嫌いにならずに、仕事を前に進めるために
マネジメントの現場に立っていると、思い通りにいかないことの連続で、時に誰かを嫌いになりそうになったり、自分自身を責めてしまったりすることがあります。
冒頭に書いた、あの夜の失敗を振り返ると、私は「いい人なのにできない」という矛盾に感情的になっていただけで、彼のどのプロセスが止まっているかを冷静に観察できていませんでした。
「人間性」と「人間力」を切り離して捉えられるようになると、不思議と感情の波立ちが収まり、目の前の霧が晴れていきます。
上司にとっても、そして部下にとっても本当に必要なものは、表面的な感情への同調ではありません。相手がどの工程で止まっているのか、どんな正義や意図を持っているのかを解読する「理解からくる共感による寄り添い」なのです。
「人としては心から敬意を払い、大切にする。でも、仕事のアサインと推進は仕組みで冷徹に担保する。」
このバランス感覚こそが、プレイングマネージャーが自分自身のメンタルを守り、同時にメンバーを理不尽な感情的叱責から守るための確かな防具になると、私は考えています。
まずは目の前のメンバーと自分自身の「混同」を解き、感情と仕組みを切り分けるところから始めてみてはいかがでしょうか。
明日からの行動宣言
- 職場メンバーの「人柄(人間性)」と「実務力(人間力)」を頭の中で分けてマッピングしてみる
- 「いい人だが成果が出ない」部下のタスクについて、理解・判断・実行・報告のどこで止まっているか観察する
- 「15分昼礼」や「週2〜3回の個別相談枠」など、相談・報告の場をあらかじめスケジュールに組み込む
この記事が「自分のことだ」と感じた方は、ぜひXやnoteのコメントで感想を聞かせてください。あなたの現場の話を聞くのが、次の記事を書く一番のエネルギーになります。
おまけ:日々の業務の中で私の思考を助けてくれる愛用品
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色々と試しましたが、現時点では負担の少なさで暫定1位です。リンク -
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